HP移転のお知らせ

東京・参宮橋に位置する、ちょうどいいアート専門店

ピカレスクのホームページを移転しました。

 

ブックマークなどしてくださっていた方は、

お手数ですがリンク先の修正のほどよろしくお願いいたします。

https://picaresquejpn.com/

 

※峯靖晃に関する最新情報は下記リンク先よりご確認いただけます。

https://picaresquejpn.com/artist/yasuakimine/

峯 靖晃(みね やすあき)

1月24日生まれ

広島県出身

 

〜作家コメント〜

主に石膏を用いて人や動物の立体作品をつくっています。粉末の石膏に水を加えて撹拌するとクリーム状になり、その後10〜15分くらいで硬化します。クリーム状のパテのような状態で量を足し、硬化してから削るという作業を繰り返しながら成形し、密度を高めていく作業行程です。加えては削る繰り返しの過程から見えてくる形、削った後の質感やそこへ着彩したときの表情などを楽しみながら、自分なりの生物像を模索していきたいです。

峯靖晃さん インタビュー

2015.12.28

 

 今回、峯さんにインタビューを行うためにスタジオまで訪問してきました。「散らかっていますが…」といいながら案内してくだる峯さんに付いていくと、部屋は一面、作品のもととなる石膏の粉で真っ白。床には作りかけの作品や過去の作品が無造作に転がっていました。その様子は散らかっているなんて言うには明らかに勿体無く、峯さんの彫刻が生まれる瞬間を唯一迎えられる、何とも綺麗な白の世界が広がっていました。そんな空間に感動して、思わず口を半分開けながら眺めていると、峯さんは小さな椅子を用意してくれ、スタジオの中、ゆっくりとインタビューがスタートしました。

 

 

 峯さんは普段、銀座のギャラリーにてスタッフとして働きながら、彫刻作品を制作しています。毎日ギャラリーの仕事と制作活動をして過ごすという峯さんは、もの静かで、じっくり考えながらお話してくださり、「芸術家」のイメージにぴったり当てはまるような方でした。

 

 そんな峯さんがつくる彫刻作品には、animalをはじめ、この世には存在しない生き物が多くあります。そして、その存在しないはずの生き物たちは、妙に愛くるしく、どこか見覚えのある形をしているので不思議です。作品制作には一つ作るのに3週間ほどかかるそうで、峯さんの作品は、構想の期間も加えるとかなりの長い時間をかけてこの世に生まれてきているということになります。そこで、峯さんが作品制作を通して考えていることを聞いてみると、「う〜ん」と間を置いた後、「生き物の原形を掴もうとしている」と教えてくれました。

 

 

 子供の頃、ゲームなどの人工的な遊びではなく、自然が好きだったという峯さんは、絵を描いたり、美術への興味も子供の頃から変わらずにあったそうです。実は、峯さんの作品が生き物に由来するのも、彫刻を制作する事自体も、小さい頃からも興味がずっと絶えずに残っているからということなのです。そんな、真っ直ぐに自分の興味・関心と向き合い続ける峯さんですが、「制作中は、毎日気持ちに少しずつ変化が起きていて、どうしてこんなものを作ったのか(作りながら)考えている」といいます。日々、彫刻を通して自身の考えと静かに向き合っている峯さんは、「生き物の原形を掴む」という考えも彫刻を始めた学生頃からあったものの、自分で言葉にできるようになったのは大分時間が経ってからだったそうです。

 

 峯さんの作品は、石膏を塗って、乾いたものを削って、また石膏を塗って…という風に、薄い石膏の膜が幾重にも蓄積することで形になっています。地層の様に重なった石膏の層一つ一つは、その時の峯さんに流れている、丁寧な時の流れを捉えています。それは、まさに人の皮膚のように、時間が経つにつれて重なり、彫刻に新しい形を与えているのです。なので、峯さんにとって、「生き物の原形を掴む」彫刻のプロセスというのは、時間軸と共に自分の思考を収めた、一種のポートレートでもあるのかも知れません。

 

 子供の頃の興味を胸に、真っ直ぐに彫刻と向き合ってきた峯さん。作品制作を通して生き物の原形を掴もうとするその姿勢は、静かで、とても力強いものでした。そして、それは丁寧に紡ぎ出される作品の魅力となって、ギャラリーに訪れるお客様を不思議な感動で包んでいます。

  

                              桑間千里