HP移転のお知らせ

東京・参宮橋に位置する、ちょうどいいアート専門店

ピカレスクのホームページを移転しました。

 

ブックマークなどしてくださっていた方は、

お手数ですがリンク先の修正のほどよろしくお願いいたします。

https://picaresquejpn.com/

 

 

イクタケマコトの最新情報は下記リンク先よりご確認いただけます。

https://picaresquejpn.com/artist/makotoikutake/

イクタケマコト

2月3日生まれ

福岡県宮若市出身

 

〜作家コメント〜

横浜市黄金町のアトリエで制作や、子供とのワークショップなどを通じ、自分、黄金町、世界を繋げる活動をしている。なお、アトリエはいつでも見学可。動物や子供をモチーフにした物語性のある、もしくは物語からイメージしたイラストを描いています。アクリル絵の具は塗るだけでなく、色を重ねたり混ぜ合わせたり削ったり、他の画材との相性も良かったり様々なことができます。もちろん下絵を作りますが、描きながらアイディアが浮かんでくる性格で、そういう直観的な表現に向いていると思います。

イクタケマコトさん インタビュー

                            2017.5

 

 

 5月あたま、展覧会開催を迎えたギャラリーで改めてイクタケさんにお話を伺う機会をいただきました。今回の展覧会のために制作された新作のアクリル画は、なんと30点にも及びます。そのモチーフの多くは、これまでの作品にもよく登場している「こども」と「星」が使われ、金とも青とも言い切ることのできない独特の光沢感を放つ背景に包まれています。白い壁を埋め尽くす新作の数と作品ごとの放つ勢いは、まさに「常に現在進行形で描き続ける」イクタケさんらしい作品展になっています。

 

 イクタケさんには、イラストレーターと主夫という二つの肩書きがあります。ある意味、家とアトリエの二つの仕事場を持つイクタケさんですが、この二つの役割を分かつようなスイッチは特にないのだと言います。展覧会初日もギャラリーで絵を描いていたというくらい、イクタケさんにとって絵を描くことは自然なことです。「頭の中にあるイメージを体現したい」という想いに突き動かされて次々と新しい作品が生まれ、毎月10枚の新作ドローイングをギャラリーに送ってくださるのも、イクタケさんだからこそなせる技といえるでしょう。

 

 物凄いスピード感で作品をつくり続ける生活について、「20m走をずっと続けているんですよ。20m5回走ったら100mになる、そうやって小走りで進んでいるんです。」と話すイクタケさん。その言葉には、どの作品にもスタートとゴールがあるのだ、という意味が含まれているように感じました。かなり早いペースで新しい作品をつくり続ける一方で、決して全てが流れるように過ぎていくのではなく、作品ごとに「否定と更新」を続けている、という事に思えます。今回新作として生まれた作品は30点あるのに対し、新しいキャンバスは5枚しかない、つまり新作の大半は昔の作品を塗りつぶして更新しているのだと聞いたことも、そんな事を思わせる理由の一つです。

 

 イクタケさんの制作のサイクルを紐解くヒントは、モチーフのなかにもあります。今回の展覧会でもよく登場する「こども」と「星」は、イクタケさんにとって、自分自身と向き合う装置にもなっています。「こどもには見えないものが見えるとか言うじゃないですか。ああいうのは、本当にあるんだろうなと思うんです。大人になってしまっては分からないけれど。」そんな風に語るイクタケさんの視線の先には、自分自身の子供時代があるようでした。不可逆な時間の流れのなかで、限られた期間誰にでも存在する子供時代。イクタケさんは、ご自身の経験や記憶の断片を一つのきっかけにして、子供時代の可能性と時の流れを大きなテーマに見据えています。大人にならなければ抱けない「こどもへの夢」を作品のモチーフに込めることで、イクタケさんは作品ごとに自分自身と向き合っているのです。それは遠い過去の自分を省みることでもあり、現在の自分のあり方に気づく作業でもあります。

 

 絵を描くことにスイッチのいらないイクタケさんにとって、この制作過程というのは、毎日の生活の一部でもあります。頭のなかの想いを具現化し、それを否定してまた更新する…この繰り返しを、超短距離走を何度も走るような感覚で毎日続けています。どこか切迫感すら感じるこのスピード感は、もはやイクタケさんが自分自身と向き合い続けている証拠でもあり、作品の一つの個性になっています。

 

 私たちがイクタケマコトさんの絵に惹かれるのは、快活で可愛らしい男の子や、恥ずかしそうにはにかむ女の子に心がくすぐられるから、だけではきっとありません。イクタケさんと同じ時代に生き、数々の作品を通してイクタケさんの走る姿をみていられるということが、しみじみと、私はとても嬉しい事に思いました。これからどんな作品がみられるのか、今生きているアーティストの作品を楽しむ醍醐味を、イクタケさんは教えてくれているような気がします。

 

 

桑間千里